「あ、いま、夢のなかにいる」

今朝は楽しかった。
6時頃にゴミ出しをして、寒さのあまり布団にもどってそのまま
二度寝したら、まどろみのなかで夢を見はじめ、そして、
その夢のなかで「いま、夢を見てる状態だ」と気がついたのだ。

私はお洒落をして部屋から出掛けようとしているんだけど、
玄関の靴箱をいくらあさっても右の靴しか見つからない。
ブーツもスリッポンもヒールパンプスも、出てくるのはすべて右。
困って、靴の右側だけ何足も抱えて裸足で玄関のドアを開けた。
と、そこはなぜか高層タワーの最上階の部屋になっており、
目の前に広がる大きな窓の向こうには、六本木ヒルズの森ビル、
東京タワー。しかもそれらを見降ろす高さにいる。

ここで「あ、いま、夢のなかにいる」と気がついた。
同時に「よっしゃラッキーーーーーーーッ!!!」

たいてい、夢だと気がつくと、急速に覚醒して目を開けてしまう。
せっかく安楽の夢の世界にいたのに、しーんとしたいつもの自分の
部屋の風景に引き戻された瞬間は、なんとも残念な気分になるものだ…。
この時も、窓の向こうの空に、巨大な黒いファスナーの線が見えた。
自分のまぶたの線だ。
これが上下に開くと、たちまち夢の世界は“夢”と消えてしまう。

ファスナーから意識を反らし、なるべくファンタジーを想像する。
想像したことはそのまま景色となって現れて、自由に遊ぶことが
できるのだ。

まず、抱えていた右だけの靴をぜんぶ猫に変えてみた。
黒猫、茶猫、白黒猫、赤猫。金色のラメの猫。
うまくいきそうだ。

それから、部屋のなかで試しにポンとジャンプしてみた。
軽々身体が浮き上がって天井に両手をぴったりつけていられる。
空を飛べると確信したので、窓を開けてベランダの柵をよじのぼった。
けっこう風が強くて寒い。
「やばい、やっぱり現実かも!?」
でもまあこんな高い所から落ちることも二度とないからいいやと思って、
東京タワーより高い空へダイブした。

気持ちええーーーーーーーー!!

一瞬まっさかさまに落ちたけど、うまく上昇して自由に飛ぶことができた。
でも、大都会の風景なんか見降ろしても汚らしくてたいして楽しくないし、
そしてここが私の想像力の愉快さなんだけど、そもそも強風のあまり、
さっきから着てる服がバッサバッサめくれ上がって、可憐なおっぱいが
丸出しになっている。
それで、実家の三重県の落ち着いた景色にスライドさせた。
近所の長いブロック塀の上やら、幼馴染みの家の屋根、港の灯台、
学校の屋上やらを落ち着いて飛び渡って遊んだ。

建物の窓が開いていれば、中に入ってみた。
生活感はそこかしこにあるし、ある家の台所には炊飯器の湯気が
充満しており、食卓に朝食の準備がなされていたりもするんだけど、
どこに行っても誰とも出会わない。
ふと、思った。


あっ、私、死んでるかも?


やっぱりさっきの高層タワーからのダイブ、現実だったのかも。

やっばー! ファスナーどこ? 空のファスナー!

上空へ、昇る、昇る、昇る!

ファスナーあった! 両手で掴んで上下にひっぱる! か、かたい!

おい、あたし、寝すぎなんだよっ! なにくそ、隙間に頭をつっこむ!

ぐおおお、めちゃくちゃ狭い! 狭すぎて息が詰まる! 死ぬーっ!

でもこの世界から出ないと! ぬおおおお、頭蓋骨がゆがむーっ!

な、なんか、でも、この強烈な狭さ、昔、どこかで体験した気がする…

これって、あたし、産まれ変わってるんじゃなあい?? ああああーっ!!




ごっふぁ!!

とても殿方には聞かせられない音声を立てて目を覚ますと、
私は、敷布団と枕の間に顔を挟んでもがいていたのでした。

やれやれ、驚いた。
楽しかったな。でもあたし、ホントに死んでたんじゃないか?

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まさか死んだ人のコンサートだったとは・・・。

「チケットがあるから」と、知人からコンサートに誘われた。
案内チラシを見せてもらうと、何人かフォーク歌手が出演するのだけど、どうも年齢層がかなり上のようで、歌手の名前を聞いてもピンと来ない。
30代の私では、フォークソング自体に馴染みがないのだ。
「でも知ってる歌がいっぱいあると思うよ。すごくいいから、とにかく行こう」
恐らく知人は、もうすこし上の世代の人を誘いたかったのだろうけど、都合が合わなかったなど事情があった様子。見るとチケット代金も高いし、席を空けたくないようだ。行くことにした。


会場は、団塊の世代、もしくはそれ以上と思われる年齢層で満員で、なんと私が最年少。女子トイレでは、介助つきの方も何人か並んでいた。
開演すると、歌ではなく、なぜか精神科医だという白髪のおしゃれな紳士が登場して、「加藤和彦」という歌手のことについて語り始めた。
会場は喜んで頷いたり、笑ったりしているんだけど、私は話の前後関係もわからないし、人物相関図も頭に浮かばないし、ちんぷんかんぷん。その後に登場する人も、フォークの歴史をおもしろおかしく語ったり、加藤和彦と自分との関わりを紹介したり、加藤和彦の作ったという歌を歌ったりしている。

ほー、今日のメインは加藤和彦っていう人なんだな。
しかし、話を聞いていると凄まじい大物なんだな。
これだけ語りまくって期待感を高めているんだから、よっぽどだ。
あっ、「あのー、すばーらしい、愛をもう一度ー♪」って、この曲知ってるよ!
中学校の音楽の教科書に載ってて、授業で合唱したもん! す、すごい!!
でも、こんなに前座の歌手たちが歌ってしまったら、本人の歌う歌が減っちゃうじゃないか。うーむ、老体にムチ打つわけにもいかず、勿体ぶって時間を稼いでいるのか。
ああ、はやく加藤和彦出てこないかなー!

・・・なんて感じで、じいーっとちんぷんかんぷんの話を聞きながら、
ご本人の登場を待っていたのだけど、ちっとも出てこないまま、第一部終了。
えええっ、これだけ語りまくって、そのメインが登場しないまま、休憩!?
す、すごすぎる。外タレのコンサートでもなかなかやらない演出だよ。
芝居『黒蜥蜴』だって、一幕から美輪明宏でてくるもん。
いいのか、こんなにもったいぶってて。団塊の世代って、気が長すぎる!!


と、思ってたら、第二部の語りを聞いていて、やっと意味がわかった。
びっくりだよ!! 加藤和彦という人は、とっくに亡くなっていたのだ!!!
そして、なんで精神科医がコンサートに出てるの? と不思議でたまらなかったお洒落な男性は、加藤和彦と一緒に「ザ・フォーク・クルセダーズ」として活動していた北山修さんという人だった!!
そういうことだったのかー!!
これはつまり、加藤和彦を偲び、フォークの時代を懐かしむコンサートだったのね。
誰も教えてくれないから、あたしひとりで加藤和彦が出てくるの心待ちにしちゃったよ!!


そして、後半の終わりごろに、さらにびっくりたまげることがおきた。
小室等さんという白髪の大物フォークシンガーが、ギターをつまびきながら
『イムジン河』という曲を歌いはじめたんだけど・・・
はじめて聞いたその歌の歌詞にびっくり!

北の大地から 南の空へ
飛びゆく鳥よ 自由の使者よ
だれが祖国を二つにわけてしまったの


朝鮮半島分断がテーマになっており、北朝鮮側の人間の気持ちになって、南側の故郷を思う気持ちを、日本語で歌っているというものなんだけど・・・
ひえー、戦後ってこんな反戦歌まであったのかあああ!
なんか、すんごい世界だなあ・・・・

と思って聞いていたら、
わたしの右の人も、左の人も、前も後も、そこに集まっていた聴衆全員が一緒になってこの曲を大声で歌いはじめるもんだから、もうめっちゃらくっちゃらにびっくらこきまろ!!

こ、こんなに歌いまくるほど、この曲、流行したのおお!?

ふ、ふうううう・・・。
ジェネレーションギャップって、自分より若い世代を見て感じるもののように思いがちだけど、自分がまだ生まれていない時代に対しても感じるんだよね。団塊の世代と自分とのギャップにぎょっとするほど衝撃を受けた昨日でありました。
びっくりびっくり。
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Jackson do Pandeiro × Beatfanatic

ビートファナティックっていい仕事するよね、ブラジルのコンピに入っていたジャクソン・ド・パンデイロのリミックスにはまりっぱなし。

Jackson do Pandeiro "Eu Balanço"(Beatfanatic Rework)


そして、ジャクソン・ド・パンデイロは、映像見れば見るほどすごく『笑点』に向いてるように思えてくる。このリズム芸人感たまらないよ、しかもめちゃくちゃうまいし。
ちっちゃいおっちゃんとして部屋にいてほしい。「おっちゃん、もう寝るからタンバリンやめて」って言ったらすごく寂しそうな顔しそう…。


Jackson do Pandeiro - Chiclete com Banana
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映画『それでも僕は帰る〜シリア 若者たちが求め続けたふるさと〜』

映画『それでも僕は帰る〜シリア 若者たちが求め続けたふるさと〜』を観てきた。
凄い作品だなあ。
シリアの若者たちによる民主化運動、はじまりは歌とシュプレヒコールによる平和的デモだったものが、アサド政権からの容赦のない虐殺によって、武装化してゆき、混迷を極めていく様子を、着弾点のど真ん中でカメラが密着しつづける。

前半、反体制派を批判する歌を歌っていた若者たちは、
あっという間に大量の銃を手にしておのおの入念に磨きはじめるようになる。
戦闘状態に入ると、親友たちはどんどん死んでゆき、精神的に追い詰められ、極限状態になってゆく。

その一連の流れと、若者たちの変貌ぶりは、まるで最初からシナリオがあったかのような、いつか読んだ原作をもとにした青春物語であるかのように感じるほどだった。

これ見ると、やっぱりSEALDsのやってることなんか、ちゃんちゃらおかしいと思ってしまう。
「戦う、さもなくば死」の中東の若者の覚悟と、結局はアメリカの軍事力に守られた日本の制度のなかでぬくぬくしている若者の支離滅裂な反抗心と。SEALDs、この映画観たほうがいいんじゃないかな……。

また、追っているカメラマンには冷酷なほどタフな一面があって、目の前で若者や子供が血まみれで死んでゆき、のべつまくなしバンバン砲弾の飛び交っているのが普通、という尋常ならざる過酷な状況下にあっても、チャンスさえあれば、綺麗な絵作りをして撮ってみせるから、凄いと思った。
ポスターに使われているシーンは、戦闘が激化した廃墟の廊下にしゃがみこむ反体制派リーダーの若者が、親友たちの死と不利な戦況に精神的に参っていくところなんだけども、そこへ光が差し込み、埃の舞い上がる情景……思わず、

「美しい憂鬱だなあ……」

なんて見入ってしまう。ドキュメンタリーだということを忘れさせる映画らしさ。
シーンのほうから「いま撮って…」って近付いてきちゃったんだな、きっと。

そもそも、この映像をよく無事に持ち出せたなあとも思うし。

で、帰宅してから知ったけど、ノーベル平和賞に、チュニジア民主化貢献団体が選ばれたあ!?
はあああ??? シリア、この状況だっていうのに?
チュニジアは、たまたま、うまく民主化されやすい環境が揃っていただけのことで、結局「アラブの春」に燃えていた他の国はすべて民主化大失敗、ますます強権的な支配に逆戻りしたり、内戦が悪化してひたすら人が死ぬ毎日を迎えてしまっている。
ノーベル平和賞って、
わけがわからないな。
核兵器廃絶を語っただけで、オバマ大統領に贈られたこともあったんだっけ。
ただの偽善じゃないか。

 
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映画『ドローン・オブ・ウォー』観て来た。

今日はシリアの映画『それでも僕は帰る』を観に行こうと思っていたのだけど、時間が間に合わなくて、シネコンへ。『ドローン・オブ・ウォー』観て来た。

日本じゃ官邸だの大使館だの城だのに大流行絶賛墜落中のドローンだけど、これは本来の殺戮兵器としての正しい使い方をリアルに描いている作品。

アルカイダ一掃作戦で実際に行われたドローン殺戮にもとづいているらしいけど、まるで空爆ゲームのようにモニターを見ながら、遠隔で現実感の薄い殺戮を行っていく様子は、あまりにも不気味で、ほとんどカルト映画を観ているような感覚になった。

しかし、上空3000メートルからの映像で、地上を歩く人間の個人の識別はもちろん、顔の表情まではっきりと見えているなんて!
しかも、そんなドローンの映像で町を監視し、操縦を行うパイロットは、戦地から1万キロ以上も離れたラスベガスの基地にいるのだ。
「100%安全な」エアコンの効いたコンテナのなかにいて、モニターの映像を見ながら、発見したターゲットを女子供もろともミサイルで爆破していく。
撃たれるほうは、まさに青天の霹靂。
バラバラになって死ぬまで、見られていたことも、ロックオンされていることも気がつかないのだから。

そうして、遠隔殺戮を行ったパイロットたちは、昼になると食堂でランチを食べ、夕方には、家族の待つ家に帰ったり、ラスベガスの町で酒をあおったりする。
グアンタナモを皮肉るセリフがあったり、「これは戦争犯罪では」「対テロ戦争など憎しみを生むだけでは?」などなどの葛藤も描かれてはいるけど、ドローンによる「実感のない殺戮」の薄気味悪さがあまりにも強くて、そんな問題定義も掻き消されていくようだった。


挙句、劇中のドローンからの俯瞰映像を見ているうちに、映画ごしの私のなかにまで、まるで自分が「正義」のために人を殺せる天の神にでもなったかのような感覚が、ふと芽生えている瞬間があった。
あるシーンで、
「こんな奴ぶっ殺しちゃえ! ボタンひとつで済むし、絶対仕返しされないし」
と。その瞬間の自分が、一番怖かったかも。


 
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やっぱり、私には「マイルド」、向かないな。

ゴー宣道場の打ち合わせ。
9条に関して書いた道場のブログについて、小林よしのり先生から、
「ものすごい過激」と言われる。
えっ、そ、そうだったの!?
しかも、小林先生に「過激」と言われるなんて、どんだけー・・・?
考えてみて、率直に「それ、どうなん?」と思ったことをそのまま
書いてみただけだったので、過激なこと言ってやるという感覚もなく、
あんまりよくわかってなかった。
もっとマイルドさを心がけたほうがいいのかな。
マイルド、マイルド。
そう考えはじめると、なんだか「マイルド」って、私の本性からは
かなり遠いものに感じてきた・・・。


一方、一昨日は、たまたま評論家の切通理作さんと話す時間があり、
朝生のSEALDsに対して批判した私のブログについて、
あれでは生温いと叱られた。
私はもともと中東の民主化デモに興味を持っていた人間だから、
デモに関して、もっとレンジの広いことを言えるはずだと。
「おばさんっぽく、狭い範囲に見えるような批判をするのではなく、
その幅広さをもっとガツンと出してヤバさを見せてほしい」
と。

そ、そうかなあ。
でも確かに、切通さんに叱られてるうちに、そうだったよなと反省。
私、イランで反体制デモやってた左派の学生たちが、
大学に乱入してきたイスラム革命防衛隊(バシジ)に乱射されまくって
血まみれで死んでいく動画とか、一生懸命見てたんだった。

イランは、2013年に当選した大統領が穏健派のため、
今はやや平和らしいけど、数年前は左派のデモが凄かった。
左派には、とにかく現状を世界に知らせたいという目的があったので、
仲間が撃たれると、こぞって携帯を取り出し、死んでいく様子を
動画撮影してYoutubeにアップしていたのだ。
でも、撃ち殺すほうはそんなの関係ない。
バシジは、強烈な反米・反イスラエル精神を持ち、
「イスラムを守るため」の崇高な任務を全うしているわけだし、
バシジの中には学生もいる。
体制派の学生が、反体制派の学生を当たり前に撃ち殺すのだ。

ああいうの、SEALDsが見たらどう感じるんだろう。
「ああ日本で良かった、安全にデモができて。帰ったらゲームもできるし」
ってな程度なんじゃねえのかよ!?
などなど、考えはじめたのでした。

やっぱり、私には「マイルド」、向かないな。

映画『それでも僕は帰る』、とても良いらしく、切通さんから直接おすすめ
されたので、なんとか期間中に足を運びたいな。
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ネットの出会い系サイトに顔写真を盗用された!…「H大好き40歳様」事件

新聞の人生相談コーナーに「友達がツイッターに私の写真を載せるので困っている」という悩みがあった。
相談者である19歳の女子大生は、紙面でこのように訴えていた。

「もしも私の写真が合成などされて、ポルノサイトに載ったら、彼らは責任を取ってくれるのでしょうか? ありえないことではありません。被害妄想が激しい私が悪いのでしょうか?」

ぜんぜん悪くない。それ、すごく正しい危機感。彼女の訴えを、自意識過剰だとか、被害妄想だとか、めんどくさい奴だとか笑う人は、ネットをなめきってます。
だってわたし、ネットに載せてた顔写真を勝手に出会い系サイトに載せられたことあるから。

 

 


あれは10年以上前、自分で開設した日記サイトに毎日毎日いろいろな変態の観察録を書いては公開していた頃のこと。とにかくアクセス数を伸ばそうと、ありとあらゆる手段を講じていた。

なにがなんでも毎日絶対に日記と笑えるエッセイを一本づつアップする!
読者からの投稿コーナーを設ける!
サイトのあちこちに飼い猫の写真を散りばめる!
それから……自分の顔写真を公開する!


いまや、まごうことなきオバサンになってしまったが、20代半ばの私はそこそこかわいくて、しかもなんだか儚さ漂う表情をしていたので、これは人に見せたほうがいいと思えて思えて仕方がなかったの。

デジカメのセルフタイマーをセットする。レフ板代わりの白いシーツを胸の前に張って、肌に明るい光を反射させたり、何度も着替えて、右から左から前から後ろから自分の顔を撮りに撮りまくった。
そのうちに、満足のゆく一枚が撮れたので、プロフィールのコーナーに掲載した。
この顔写真のおかげ……のはずはないが、アクセス数は順調に伸びていった。
ある日、読者の女性からメールが届いた。

「木蘭さんの顔写真が、出会い系サイトに使われてますよ! どう考えても無断盗用だと思うんですけど、もう、凄いことになってます!!」

えっ? 驚いて記載されていたURLをのぞいてみて、愕然とした。
ピンクとたまご色が基調とされた、ハートマークの飛び交うそのサイトには

『いますぐ会える♥ 絶対会える♥ サクラのいない出会い系♥』

というキャッチコピーが掲げられており、中央には

『ただいまアクセス中♥』

というコーナー。ここに4枚の10代〜20代らしき女の子の写真が並べられ、それぞれにハンドルネームとメッセージが添えられていた。

《ゆぅか♪さん》 「ヒマだぁ→ぃまから会ぇなぃかな?メッセ待ってるね♪」
《ぁゅみ☆さん》 「これからアソボ♥ まずはTEL番交換から´ω`)ノ☆★☆」
《ケイ子さん》 「20代のOLです。週末の予定がからっぽ。。。しょぼーん…。」


そして、最後のひとりが……。




《H大好き40歳★さん》
「いますぐにでも会いたいです。メール頂ければ、すぐに折り返します」



 
な、ぬ、ぬわぁ〜んじゃこりゃあああああ!?
あたしの渾身の一枚が、なんつうことに使われとると!?


しかも同じく無断盗用されたのであろう他の女の子たちは「ゆぅか♪」とか「ぁゅみ☆」とかかわいらしいハンドルネームなのに、なんであたしの写真だけが「H大好き40歳」にされてるのよーっ!?
メッセージもやたら切羽詰まってて、そもそもなにこの名前!? 熟女感を表現しようとするあまり、40歳を差別してない!? 輪をかけて失礼極まりないのよおっ!!

大激怒した私は、運営会社の連絡先を見つけようとした。ところが、問い合わせメールアドレスがぽつんと記載されているのみで、所在地はおろか電話番号も見当たらない。メールではなあ……。
サイトのURLを見ると、「cute****girls.net」というドメインが使われていたので、これをドメイン名登録情報検索サービスにかけた。すると名義は、東京都内のある会社となっていた。興奮した私は電話番号を調べてすぐにかけた。

「はい、◎◎◎システムでございます」

「おたくの、キュートなんとかガールズネットっていうサイト、ネットで拾った女の子の写真を無断盗用してますけど、どーいうおつもりですか!?」

「はい?」

「出会い系サイトですよ! 女の子の写真が4枚ありますけど、一枚は私の写真なんです! 『H大好き40歳』っていう名前で勝手に使われてるんですよ!」

「大変申し訳ございませんが、当方、ホスティング専門の会社でございまして……」

どうやらこの会社は、出会い系サイトから契約申し込みを受けて、ドメインとサーバーを貸しているだけで、まったくの無関係らしかった。
電話の向こうの女性は非常に恐縮した様子で、契約先がどのようなサイトを運営しているかまでは把握しておらず、また、守秘義務があるので手続きなしには情報開示できないと説明してくれた。仕方なく電話を切った。
大激怒した女からいきなり「私の写真が『H大好き40歳』として勝手に使われてる!」と怒られるなんてものすごく気の毒だし、きっと受話器置くなりこらえていた笑いが込み上げてきて、いまごろ爆笑してるに違いない……。
やはり、最初に見つけたメールアドレスに連絡してみることにした。


 


貴社が運営する出会い系サイトに、私の顔写真が無断盗用されております。
早急に削除をしていただけますか。
トップページの『ただいまアクセス中♥』に掲載されている4枚のうち「H大好き40歳」という名前がついている写真です。
ネットで適当に拾った写真をこんなサイトに勝手に利用するなんて、どういったおつもりなのでしょうか? もしこれを私の知人が見てしまったら、どうなると思いますか? 知人でなくとも悪意のある人間が、私を特定して転載するかもしれません。そうなった時の責任はとれるんですか? 損害賠償できるんですか?
なにかあった時のために、現在のサイトは保存させていただきました!
そもそも、『いますぐ会える、絶対会える、サクラのいない出会い系』なんて嘘なんじゃないですか? 仮に本当にサクラがいないとしても、「H大好き40歳」は架空の女じゃないですか! 詐欺ですよ! 私だけではなく、他の3枚も無断盗用なんじゃないですか? そもそも私は40歳ではありませんし! 失礼極まりないです! すぐに削除して下さい! 


 


なるべく怒りを抑えて冷静に書きはじめたつもりだったが、感情に任せて言いたい放題書き殴ってしまった。自分の女らしさにウンザリする。
ダメモトで送信。すると、なんと1時間もたたないうちに返事が届いた!


 

 


お問い合わせのコーナーにつきましては、当サイトに登録されている方の情報を、ランダムに自動選択して表示するものであり、内容の真偽については一切把握しておりません。
ご指摘の写真は、「H大好き40歳」様によって、当サイトにアップロードされたものでございます。無断盗用については当サイトではなく、「H大好き40歳」様が、行ったものと考えられます。
本来は、「H大好き40歳」様に確認をとり、削除要請するという流れになります。しかしながら、このたびのお怒りと状況を考慮させていただき、写真は既に削除いたしました。
運営元として責務を重く受け止め、「H大好き40歳」様には、当サイトより注意勧告をさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。


 

 


こ、こ、こ、このやろぉぉぉ……

H大好き40歳、H大好き40歳って連呼しすぎなんだよおっ!!

腹立つう! ナメまくってくれるじゃないかあ!
あくまでも悪いのはH大好き40歳さんで、うちはむしろ早急に削除してやった親切な会社だよって感じで、一言も謝ってない。
サイトを見にいくと、私の写真も、H大好き40歳さんからのメッセージも、たしかに削除されていた。他の女の子の写真もすべて違う顔に入れ替わっていた。が、ハンドルネームは《ゆぅか♪》《ぁゅみ☆》《ケイ子》のままで、メッセージもそのままという、凄まじくずさんな改変であった。
ほうら、やっぱり、予想通り架空の女なんじゃないかよー……。
でも、これで騙されてお金払っちゃう人がいるから、こんなインチキ出会い系サイトが成り立つんだよなあ。はあ、もう、関わってるだけ損するわ。

その日の私は、念のために保存しておいたこのサイトのスクリーン画像を自分のサイトに掲載し、「H大好き40歳様と呼ばれて」という日記を書いて笑いをとり、元をとったことは言うまでもない。
やれやれペテン野郎がいっぱいだぜ。ネットなんか、信じちゃいけないよ。

 

 

出会い系サイトの裏事情 〜僕がサクラで女になる日〜

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ああ、いきなり怒鳴られにくい表情括約筋の使い方を知りたい。

新宿二丁目アイララMIX DJ NIGHT》。
「ラテンDJあるある」について話した。

『サルサシューズに履き替えたりする“ものすごく踊る系”のパーティーは、メレンゲとバチャータかけても、盛り上げるの難しい』とか。

『そういうパーティーは、だいたい、バチャータがめちゃくちゃエロい感じになるので、かるく遊びにきた女の子が引いちゃったりする』とか。

わ、わかるなあ!!

そもそもバチャータは、男女のエッチ〜ぃ、あまぁ〜ぃダンスなんだけど
(Youtubeで「Bachata Dance」とか検索するとよし)
サルサ覚えたてで、まだバチャータがどんなダンスなのかも知らなかったころ、
続きを読む
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なぜあきらめてはいけないんだ! 人はみな松岡修造ではないんだよ!

古市憲寿氏の著書『だから日本はズレている』を読んだんだけど
おもしろかったなあ。
なかでも、いつもどこかズレているおじさんたち=「大人たち」が
作り出す、過剰で無用な新製品の一例として、「スマート家電」
痛烈に批判した章。

 
すでに飽和状態となった生活家電を売るために、いま流行りの
「スマートフォンと連動」という付加価値をむりやりつけて売ろうとする
「家電業界のご乱心」。
いまざっとネットで検索したみただけでも、
 
◎スマート炊飯器
「スマホを炊飯器にかざすと、主要15銘柄の米の特性に合った、
最適なプログラムで炊飯できる」
 
◎スマート電子レンジ
「アプリから食材やメニュー名でレシピを検索し、レシピどおりの
加熱設定をレンジにタッチして設定できる」
 
ホンットーにいらん機能ばかり。
案の定、一般消費者にはウケない。
このムダさやバカバカしさに、古市氏が冷ややかな視線と、鋭く
面白いツッコミを浴びせており、私は爆笑しながら
読みました。
こういった過剰でムダな珍商品現象は、おじさんに限らず、
いまの消費社会には溢れていると思います。

 
特に私が気になっているのは、いまの日本の製品CMの多くは、
私たちに
「あきらめさせてくれない」ことです。
気になる言葉を調べようと検索サイトを開けば、
 
「ポッコリおなかを諦めないで!」
 
「加齢臭、あきらめていませんか!?」
 
タクシーにのれば、目の前のチラシには
 
「ハゲをあきらめるな!」
 
「歯周病を諦めていませんか?」
 
フェイスブックを開くと、
 
「あきらめちゃダメ。若返り肌年齢術」
 
「あきらめないで! メスを入れずにバストアップできます!」
 
「諦めない。貧乳の悩み。産後の垂れ乳は戻ります」

 
やかましいんだよ!!

 
そりゃアタシだって峰不二子に憧れたことはあったけどなあ、
今はこのちっちゃい小ぶりなおっぱいがヒジョーに気に入っているし、
人様から「山あり谷ありの生き方するよねえ」と言われた時は
ぺちゃんこのおっぱいと、ぺちゃんこのお尻を武器に、
 
「いえいえ、あたくし、前も後ろも平らな人間でございます・・・平伏。」

と返して笑いをとるパターンまで生み出しているんだよ!!!

 
そもそも、なぜ、あきらめてはいけないんだ!!

 
ポッコリおなかの原因は怠惰だけじゃなく、体質や体調や職業上の姿勢や、
むしろポッコリしてるほうが良い場合もあるわけだし、
加齢臭なんか男女問わず全員が醸し出してしまうもんなんだし、
ハゲ散らかしても、かっこいいオヤジに私は惚れるし、
歯周病なんて、歯医者嫌いなやつは考えただけでストレスでしかないし、
肌年齢だあ!? 年相応に老いて素敵な笑いジワが増えてなにが悪いよ!!

 
あきらめる部分があったっていいじゃないか!!
 
人はみな松岡修造じゃないんだよ!!


あきらめることが、自分の等身大を受け入れることでもあり、
受け入れることは、自分を客観視することでもあり、
それは幼稚な自己愛からの成長のきっかけでもあったりするんじゃないか!
「あきらめさせない商法」の日本人は、
トレーニングビデオのなかの躁状態のアメリカ人ですか!?

 
「さあー、まだまだー、あきらめないでー、このワンセットでー、
あなたの理想のー、ボディシェイプ! ボディシェイプ! HEY!」
 
うるさーーい!! 
一体どーしてこんな躁状態のアメリカ人みたいな商売でいっぱいなのか。
「本当のキミはそうじゃないだろう? もっと・・・大きなおっぱいのはず」
ふむふむ。
「自分さがし」の結果、迷子になった子羊たちの不安につけこんで、

生理食塩水バッグを売りつけようって魂胆かい?

 
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乳ごときで人の人生に踏み込んでくるんじゃないよ!

タクシーに乗ると、後部座席にチラシが2種類ぶら下がっていた。
 
「あきらめるのはまだ早い! 薄毛治療」
「たった一度の人生。そのバストで満足ですか?」
 
うるせー!
乳ごときで人の人生に踏み込んでくるんじゃないよ!

 
まただよ。「あきらめさせない商法」。
豊胸にはまったく興味がないので、薄毛のほうを手にすると、
『思ったよりは安い値段で毛を増やせますぜ、旦那!』
というようなことがアピールされていた。
思ったよりは安く感じるような気がしないでもないだけで、
なんとなく総額を見積もってみると、十分高い。
んま、タクシー乗るのはお金のある人が多いから、
こういう広告が向いているんだろうな。
 
だいたい、世の中には広告が多すぎるんじゃい!
あーしろ、こーしろ、来い、買え、食え、泣け、ハマれ、泊まれ。
もうーいーくつ寝ーるーと、「詣でよ」「拝め」と言われる。
どこで何をしていても四方八方ぎゃーぎゃーアピールするから、
すっかり冷めてしまって、どれもこれも良く思えない。
 
なかでもやはり『あきらめるな系』に代表されるような、
「個別・個人の特徴」に言及してくるメッセージが増えた。
努力を惜しまず今の自分よりもステップアップするという考えは、
前向きだし絶対必要だし好きだけど、
いまの世界に溢れる安易な「あきらめるな」には、
前を向いているのかどうか、それが「前」なのかすらわからない、
目的の定まらない、ひどくぼんやりとした病巣のようなものが
奥に潜んでいるように私は感じてしまう。
 
いまのあなたは本当のあなたじゃないんだよ・・・
あなたにはもっと楽で幸福で理想的な未来があるはずなんだ・・・
ねえ、こんなはずじゃなかったでしょう・・・?
淋しいだろうから、一緒にさがしてあげるよ・・・
あなたにふさわしい、もっと本当のあなたをね・・・
ほうら、こっちへおいで・・・
そんな自分はさっさと捨てて・・・
もっと自我を底上げしようよ・・・
あなただけは、もっと高いところから世界を眺めようよ・・・
 
みたいな。
「自分さがし」が流行り、「迷子」が増え、
「いまの自分は本当の自分じゃないんだ」という考えに浸ってしまい、
いつの間にか自己愛の増強に歯止めが効かなくなっていく。
自己愛を満たせないものには耐えられないから背を向け、
そして、社会よりも、圧倒的に個人・私的に向かっていく。
社会全体がそんな風に病んでいく現象。怖い。
道場の打ち合わせの席に、笹さんが資料として、
「心のノート」を持参されていた。
文部科学省が中学校の道徳教育のために制作したものだ。
最初のページにはこんなポエムが載っていた。

 
自分さがしの旅に出よう
カバンに希望をつめ込んで 風のうたに身をまかせ
自分づくりの旅に出よう
遠くで何かが光ってる 近くでだれかが呼んでいる
かかえきれない大きな夢と たかぶるばかりの鼓動の波が
かってに大地をけっていく
さがしものは風の中? 黙ったままの森の中?
輝く何かがたまってきたら 心のページをめくってみよう
そこに何かが待っている きっとだれかが待っている


ううう・・・なんだこのぼんやりした「病んでる」感。
きっとだれかが待っている、って、薄気味悪くてページめくれないよ・・・

私は以前、
適応障害という診断でかなりしんどいことになり、
精神科にたっぷり通った経験があるのだが、
そのときに
医者から
「自分の状態を自分で知ることが第一歩だよ」
とアドバイスされて手渡された本に、
これとそっくりのポエムが掲載されていた。
アダルトチルドレンに関する本だった。

登場人物が「過去」という名の記憶の森のなかへ旅に出るという設定で、
子供時代の記憶をよみがえらせた登場人物たちが、
虐待や自殺未遂の体験談、親のために子供を演じた記憶なんかを
独白し、それをたっぷり読まされることで、
読者も、みずから見捨ててしまった自分の過去と手を繋ごう、
あるいは過去に縛り付けられている自分を解放させようという
衝撃的にエグくて
疲れる本だった。
だから私には、「自分さがしの旅」ってやつは、
「未来に向かう力を失った人が、過去にもどり病巣を探す作業」
というイメージがある。
ぜんぜん悠長でもロマンティックでも夢があふれてもいない。
心臓をえぐって淀んだ血を吹き出させるような痛みの連続だ。

ああ、つかれるぜ。

 
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