ネットの出会い系サイトに顔写真を盗用された!…「H大好き40歳様」事件

新聞の人生相談コーナーに「友達がツイッターに私の写真を載せるので困っている」という悩みがあった。
相談者である19歳の女子大生は、紙面でこのように訴えていた。

「もしも私の写真が合成などされて、ポルノサイトに載ったら、彼らは責任を取ってくれるのでしょうか? ありえないことではありません。被害妄想が激しい私が悪いのでしょうか?」

ぜんぜん悪くない。それ、すごく正しい危機感。彼女の訴えを、自意識過剰だとか、被害妄想だとか、めんどくさい奴だとか笑う人は、ネットをなめきってます。
だってわたし、ネットに載せてた顔写真を勝手に出会い系サイトに載せられたことあるから。

 

 


あれは10年以上前、自分で開設した日記サイトに毎日毎日いろいろな変態の観察録を書いては公開していた頃のこと。とにかくアクセス数を伸ばそうと、ありとあらゆる手段を講じていた。

なにがなんでも毎日絶対に日記と笑えるエッセイを一本づつアップする!
読者からの投稿コーナーを設ける!
サイトのあちこちに飼い猫の写真を散りばめる!
それから……自分の顔写真を公開する!


いまや、まごうことなきオバサンになってしまったが、20代半ばの私はそこそこかわいくて、しかもなんだか儚さ漂う表情をしていたので、これは人に見せたほうがいいと思えて思えて仕方がなかったの。

デジカメのセルフタイマーをセットする。レフ板代わりの白いシーツを胸の前に張って、肌に明るい光を反射させたり、何度も着替えて、右から左から前から後ろから自分の顔を撮りに撮りまくった。
そのうちに、満足のゆく一枚が撮れたので、プロフィールのコーナーに掲載した。
この顔写真のおかげ……のはずはないが、アクセス数は順調に伸びていった。
ある日、読者の女性からメールが届いた。

「木蘭さんの顔写真が、出会い系サイトに使われてますよ! どう考えても無断盗用だと思うんですけど、もう、凄いことになってます!!」

えっ? 驚いて記載されていたURLをのぞいてみて、愕然とした。
ピンクとたまご色が基調とされた、ハートマークの飛び交うそのサイトには

『いますぐ会える♥ 絶対会える♥ サクラのいない出会い系♥』

というキャッチコピーが掲げられており、中央には

『ただいまアクセス中♥』

というコーナー。ここに4枚の10代〜20代らしき女の子の写真が並べられ、それぞれにハンドルネームとメッセージが添えられていた。

《ゆぅか♪さん》 「ヒマだぁ→ぃまから会ぇなぃかな?メッセ待ってるね♪」
《ぁゅみ☆さん》 「これからアソボ♥ まずはTEL番交換から´ω`)ノ☆★☆」
《ケイ子さん》 「20代のOLです。週末の予定がからっぽ。。。しょぼーん…。」


そして、最後のひとりが……。




《H大好き40歳★さん》
「いますぐにでも会いたいです。メール頂ければ、すぐに折り返します」



 
な、ぬ、ぬわぁ〜んじゃこりゃあああああ!?
あたしの渾身の一枚が、なんつうことに使われとると!?


しかも同じく無断盗用されたのであろう他の女の子たちは「ゆぅか♪」とか「ぁゅみ☆」とかかわいらしいハンドルネームなのに、なんであたしの写真だけが「H大好き40歳」にされてるのよーっ!?
メッセージもやたら切羽詰まってて、そもそもなにこの名前!? 熟女感を表現しようとするあまり、40歳を差別してない!? 輪をかけて失礼極まりないのよおっ!!

大激怒した私は、運営会社の連絡先を見つけようとした。ところが、問い合わせメールアドレスがぽつんと記載されているのみで、所在地はおろか電話番号も見当たらない。メールではなあ……。
サイトのURLを見ると、「cute****girls.net」というドメインが使われていたので、これをドメイン名登録情報検索サービスにかけた。すると名義は、東京都内のある会社となっていた。興奮した私は電話番号を調べてすぐにかけた。

「はい、◎◎◎システムでございます」

「おたくの、キュートなんとかガールズネットっていうサイト、ネットで拾った女の子の写真を無断盗用してますけど、どーいうおつもりですか!?」

「はい?」

「出会い系サイトですよ! 女の子の写真が4枚ありますけど、一枚は私の写真なんです! 『H大好き40歳』っていう名前で勝手に使われてるんですよ!」

「大変申し訳ございませんが、当方、ホスティング専門の会社でございまして……」

どうやらこの会社は、出会い系サイトから契約申し込みを受けて、ドメインとサーバーを貸しているだけで、まったくの無関係らしかった。
電話の向こうの女性は非常に恐縮した様子で、契約先がどのようなサイトを運営しているかまでは把握しておらず、また、守秘義務があるので手続きなしには情報開示できないと説明してくれた。仕方なく電話を切った。
大激怒した女からいきなり「私の写真が『H大好き40歳』として勝手に使われてる!」と怒られるなんてものすごく気の毒だし、きっと受話器置くなりこらえていた笑いが込み上げてきて、いまごろ爆笑してるに違いない……。
やはり、最初に見つけたメールアドレスに連絡してみることにした。


 


貴社が運営する出会い系サイトに、私の顔写真が無断盗用されております。
早急に削除をしていただけますか。
トップページの『ただいまアクセス中♥』に掲載されている4枚のうち「H大好き40歳」という名前がついている写真です。
ネットで適当に拾った写真をこんなサイトに勝手に利用するなんて、どういったおつもりなのでしょうか? もしこれを私の知人が見てしまったら、どうなると思いますか? 知人でなくとも悪意のある人間が、私を特定して転載するかもしれません。そうなった時の責任はとれるんですか? 損害賠償できるんですか?
なにかあった時のために、現在のサイトは保存させていただきました!
そもそも、『いますぐ会える、絶対会える、サクラのいない出会い系』なんて嘘なんじゃないですか? 仮に本当にサクラがいないとしても、「H大好き40歳」は架空の女じゃないですか! 詐欺ですよ! 私だけではなく、他の3枚も無断盗用なんじゃないですか? そもそも私は40歳ではありませんし! 失礼極まりないです! すぐに削除して下さい! 


 


なるべく怒りを抑えて冷静に書きはじめたつもりだったが、感情に任せて言いたい放題書き殴ってしまった。自分の女らしさにウンザリする。
ダメモトで送信。すると、なんと1時間もたたないうちに返事が届いた!


 

 


お問い合わせのコーナーにつきましては、当サイトに登録されている方の情報を、ランダムに自動選択して表示するものであり、内容の真偽については一切把握しておりません。
ご指摘の写真は、「H大好き40歳」様によって、当サイトにアップロードされたものでございます。無断盗用については当サイトではなく、「H大好き40歳」様が、行ったものと考えられます。
本来は、「H大好き40歳」様に確認をとり、削除要請するという流れになります。しかしながら、このたびのお怒りと状況を考慮させていただき、写真は既に削除いたしました。
運営元として責務を重く受け止め、「H大好き40歳」様には、当サイトより注意勧告をさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。


 

 


こ、こ、こ、このやろぉぉぉ……

H大好き40歳、H大好き40歳って連呼しすぎなんだよおっ!!

腹立つう! ナメまくってくれるじゃないかあ!
あくまでも悪いのはH大好き40歳さんで、うちはむしろ早急に削除してやった親切な会社だよって感じで、一言も謝ってない。
サイトを見にいくと、私の写真も、H大好き40歳さんからのメッセージも、たしかに削除されていた。他の女の子の写真もすべて違う顔に入れ替わっていた。が、ハンドルネームは《ゆぅか♪》《ぁゅみ☆》《ケイ子》のままで、メッセージもそのままという、凄まじくずさんな改変であった。
ほうら、やっぱり、予想通り架空の女なんじゃないかよー……。
でも、これで騙されてお金払っちゃう人がいるから、こんなインチキ出会い系サイトが成り立つんだよなあ。はあ、もう、関わってるだけ損するわ。

その日の私は、念のために保存しておいたこのサイトのスクリーン画像を自分のサイトに掲載し、「H大好き40歳様と呼ばれて」という日記を書いて笑いをとり、元をとったことは言うまでもない。
やれやれペテン野郎がいっぱいだぜ。ネットなんか、信じちゃいけないよ。

 

 

出会い系サイトの裏事情 〜僕がサクラで女になる日〜

日誌 | - | -

ああ、いきなり怒鳴られにくい表情括約筋の使い方を知りたい。

新宿二丁目アイララMIX DJ NIGHT》。
「ラテンDJあるある」について話した。

『サルサシューズに履き替えたりする“ものすごく踊る系”のパーティーは、メレンゲとバチャータかけても、盛り上げるの難しい』とか。

『そういうパーティーは、だいたい、バチャータがめちゃくちゃエロい感じになるので、かるく遊びにきた女の子が引いちゃったりする』とか。

わ、わかるなあ!!

そもそもバチャータは、男女のエッチ〜ぃ、あまぁ〜ぃダンスなんだけど
(Youtubeで「Bachata Dance」とか検索するとよし)
サルサ覚えたてで、まだバチャータがどんなダンスなのかも知らなかったころ、
続きを読む
日誌 | - | -

なぜあきらめてはいけないんだ! 人はみな松岡修造ではないんだよ!

古市憲寿氏の著書『だから日本はズレている』を読んだんだけど
おもしろかったなあ。
なかでも、いつもどこかズレているおじさんたち=「大人たち」が
作り出す、過剰で無用な新製品の一例として、「スマート家電」
痛烈に批判した章。

 
すでに飽和状態となった生活家電を売るために、いま流行りの
「スマートフォンと連動」という付加価値をむりやりつけて売ろうとする
「家電業界のご乱心」。
いまざっとネットで検索したみただけでも、
 
◎スマート炊飯器
「スマホを炊飯器にかざすと、主要15銘柄の米の特性に合った、
最適なプログラムで炊飯できる」
 
◎スマート電子レンジ
「アプリから食材やメニュー名でレシピを検索し、レシピどおりの
加熱設定をレンジにタッチして設定できる」
 
ホンットーにいらん機能ばかり。
案の定、一般消費者にはウケない。
このムダさやバカバカしさに、古市氏が冷ややかな視線と、鋭く
面白いツッコミを浴びせており、私は爆笑しながら
読みました。
こういった過剰でムダな珍商品現象は、おじさんに限らず、
いまの消費社会には溢れていると思います。

 
特に私が気になっているのは、いまの日本の製品CMの多くは、
私たちに
「あきらめさせてくれない」ことです。
気になる言葉を調べようと検索サイトを開けば、
 
「ポッコリおなかを諦めないで!」
 
「加齢臭、あきらめていませんか!?」
 
タクシーにのれば、目の前のチラシには
 
「ハゲをあきらめるな!」
 
「歯周病を諦めていませんか?」
 
フェイスブックを開くと、
 
「あきらめちゃダメ。若返り肌年齢術」
 
「あきらめないで! メスを入れずにバストアップできます!」
 
「諦めない。貧乳の悩み。産後の垂れ乳は戻ります」

 
やかましいんだよ!!

 
そりゃアタシだって峰不二子に憧れたことはあったけどなあ、
今はこのちっちゃい小ぶりなおっぱいがヒジョーに気に入っているし、
人様から「山あり谷ありの生き方するよねえ」と言われた時は
ぺちゃんこのおっぱいと、ぺちゃんこのお尻を武器に、
 
「いえいえ、あたくし、前も後ろも平らな人間でございます・・・平伏。」

と返して笑いをとるパターンまで生み出しているんだよ!!!

 
そもそも、なぜ、あきらめてはいけないんだ!!

 
ポッコリおなかの原因は怠惰だけじゃなく、体質や体調や職業上の姿勢や、
むしろポッコリしてるほうが良い場合もあるわけだし、
加齢臭なんか男女問わず全員が醸し出してしまうもんなんだし、
ハゲ散らかしても、かっこいいオヤジに私は惚れるし、
歯周病なんて、歯医者嫌いなやつは考えただけでストレスでしかないし、
肌年齢だあ!? 年相応に老いて素敵な笑いジワが増えてなにが悪いよ!!

 
あきらめる部分があったっていいじゃないか!!
 
人はみな松岡修造じゃないんだよ!!


あきらめることが、自分の等身大を受け入れることでもあり、
受け入れることは、自分を客観視することでもあり、
それは幼稚な自己愛からの成長のきっかけでもあったりするんじゃないか!
「あきらめさせない商法」の日本人は、
トレーニングビデオのなかの躁状態のアメリカ人ですか!?

 
「さあー、まだまだー、あきらめないでー、このワンセットでー、
あなたの理想のー、ボディシェイプ! ボディシェイプ! HEY!」
 
うるさーーい!! 
一体どーしてこんな躁状態のアメリカ人みたいな商売でいっぱいなのか。
「本当のキミはそうじゃないだろう? もっと・・・大きなおっぱいのはず」
ふむふむ。
「自分さがし」の結果、迷子になった子羊たちの不安につけこんで、

生理食塩水バッグを売りつけようって魂胆かい?

 
日誌 | comments(0) | -

乳ごときで人の人生に踏み込んでくるんじゃないよ!

タクシーに乗ると、後部座席にチラシが2種類ぶら下がっていた。
 
「あきらめるのはまだ早い! 薄毛治療」
「たった一度の人生。そのバストで満足ですか?」
 
うるせー!
乳ごときで人の人生に踏み込んでくるんじゃないよ!

 
まただよ。「あきらめさせない商法」。
豊胸にはまったく興味がないので、薄毛のほうを手にすると、
『思ったよりは安い値段で毛を増やせますぜ、旦那!』
というようなことがアピールされていた。
思ったよりは安く感じるような気がしないでもないだけで、
なんとなく総額を見積もってみると、十分高い。
んま、タクシー乗るのはお金のある人が多いから、
こういう広告が向いているんだろうな。
 
だいたい、世の中には広告が多すぎるんじゃい!
あーしろ、こーしろ、来い、買え、食え、泣け、ハマれ、泊まれ。
もうーいーくつ寝ーるーと、「詣でよ」「拝め」と言われる。
どこで何をしていても四方八方ぎゃーぎゃーアピールするから、
すっかり冷めてしまって、どれもこれも良く思えない。
 
なかでもやはり『あきらめるな系』に代表されるような、
「個別・個人の特徴」に言及してくるメッセージが増えた。
努力を惜しまず今の自分よりもステップアップするという考えは、
前向きだし絶対必要だし好きだけど、
いまの世界に溢れる安易な「あきらめるな」には、
前を向いているのかどうか、それが「前」なのかすらわからない、
目的の定まらない、ひどくぼんやりとした病巣のようなものが
奥に潜んでいるように私は感じてしまう。
 
いまのあなたは本当のあなたじゃないんだよ・・・
あなたにはもっと楽で幸福で理想的な未来があるはずなんだ・・・
ねえ、こんなはずじゃなかったでしょう・・・?
淋しいだろうから、一緒にさがしてあげるよ・・・
あなたにふさわしい、もっと本当のあなたをね・・・
ほうら、こっちへおいで・・・
そんな自分はさっさと捨てて・・・
もっと自我を底上げしようよ・・・
あなただけは、もっと高いところから世界を眺めようよ・・・
 
みたいな。
「自分さがし」が流行り、「迷子」が増え、
「いまの自分は本当の自分じゃないんだ」という考えに浸ってしまい、
いつの間にか自己愛の増強に歯止めが効かなくなっていく。
自己愛を満たせないものには耐えられないから背を向け、
そして、社会よりも、圧倒的に個人・私的に向かっていく。
社会全体がそんな風に病んでいく現象。怖い。
道場の打ち合わせの席に、笹さんが資料として、
「心のノート」を持参されていた。
文部科学省が中学校の道徳教育のために制作したものだ。
最初のページにはこんなポエムが載っていた。

 
自分さがしの旅に出よう
カバンに希望をつめ込んで 風のうたに身をまかせ
自分づくりの旅に出よう
遠くで何かが光ってる 近くでだれかが呼んでいる
かかえきれない大きな夢と たかぶるばかりの鼓動の波が
かってに大地をけっていく
さがしものは風の中? 黙ったままの森の中?
輝く何かがたまってきたら 心のページをめくってみよう
そこに何かが待っている きっとだれかが待っている


ううう・・・なんだこのぼんやりした「病んでる」感。
きっとだれかが待っている、って、薄気味悪くてページめくれないよ・・・

私は以前、
適応障害という診断でかなりしんどいことになり、
精神科にたっぷり通った経験があるのだが、
そのときに
医者から
「自分の状態を自分で知ることが第一歩だよ」
とアドバイスされて手渡された本に、
これとそっくりのポエムが掲載されていた。
アダルトチルドレンに関する本だった。

登場人物が「過去」という名の記憶の森のなかへ旅に出るという設定で、
子供時代の記憶をよみがえらせた登場人物たちが、
虐待や自殺未遂の体験談、親のために子供を演じた記憶なんかを
独白し、それをたっぷり読まされることで、
読者も、みずから見捨ててしまった自分の過去と手を繋ごう、
あるいは過去に縛り付けられている自分を解放させようという
衝撃的にエグくて
疲れる本だった。
だから私には、「自分さがしの旅」ってやつは、
「未来に向かう力を失った人が、過去にもどり病巣を探す作業」
というイメージがある。
ぜんぜん悠長でもロマンティックでも夢があふれてもいない。
心臓をえぐって淀んだ血を吹き出させるような痛みの連続だ。

ああ、つかれるぜ。

 
日誌 | comments(0) | -

うどん粉でのお支払いはお断りしております

しばらく着ていないコムデギャルソンのワンピースをオークションに出品して、落札されて、取引連絡。
…したら、落札した方から

「1万円を現金で振り込むから、残金はうどん粉と引き換え取引しませんか?」

ざ、残金6000円をうどん粉で…⁉
正味1kg7〜800円でしょうに、何kg送ってくるつもりなんだよお!
しかも「讃岐です。」って、6000円分もねりねり讃岐うどん手打ちしてられるかっちゅうの! ワンピースがうどんこ病になっちゃうよ!
お断りしたら、今回は取引キャンセルとなりました。
まさかこんな全力でうどん粉振りかざしてくる人と出会うとは…。
油断ならないなーもー。
日誌 | comments(0) | -

昭和の「乗っ取り屋」横井英樹

昨夜は、ずっと持ち歩いてちょびちょび趣味で読んでいた
横井英樹の本を読み終わって、かなり爽快な気分になっていました。
昭和の「乗っ取り屋」。ホテルニュージャパンを燃やした男。
ラッパーのZEEBRAのおじいちゃんです。

田舎の赤貧家庭に生まれてアル中の父親に虐げられた横井英樹は、
続きを読む
日誌 | comments(0) | -

鼻から胃カメラを飲んだ(後編)

「ごおぇええぶぉおえ゛え゛え゛! ぶごふぉおええ゛え゛え゛!」
 
歯医者の待合室でキンキン響く金属音を聞かされる不安とはレベルがちがう。
カーテンの奥の胃カメラ検査室からは、獣のような咆哮・・・。
咆哮? いや、そんなものじゃない。
これは、

首を掻っ切られた断末魔の肉食動物の音

だ。
鼻から胃カメラをつっこまれた大の男が、恥も外聞もなく、
こらえようもない激しい苦痛の音を、身体から立てているのだ。
 
検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい
 
ありえない。これから自分があんな断末魔の音を発する目に遭うなんて、ありえない。
すでに鼻から液剤と麻酔ゼリーをジュボジュボつっこまれて相当に痛い思いはしているが、
いまならまだ引き返せる。
うん。やめて、帰ろう。
帰って、アンパンマンのビデオを観ましょう。
なにを言っているのだ。
ていうか、ここまで準備してもらってから怖気づくなんて、あまりにみっともないよな・・・。

 
そうだ!
絶食のはずが、「ついうっかり食べてしまって、
『検査不能』ってことにしちゃう?
なんか食べ物持ってないかな!? ポケットにビスケットとか!
 
検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい検査やめたい

「お待たせしましたー。泉美さん、では検査台へお願いします」
 
アーーーッ・・・!
 
**

検査ベッドの上に横たわると、体を右向きに、膝を曲げ、両手を胸の前にと指示された。
医師が自分の背丈よりも高い大きな大きな機材一式をころがして近づいてくる。
手袋をはめた医師の手には、黒い、長い、チューブが・・・
 
・・・えええっ!? ぜんぜん細くないぢゃん!!
 
鉛筆ぐらいある。
 
鉛筆ぐらいの太さの黒いチューブが、モニターのついた物々しい機械から飛び出し、
2メートル近くトグロを巻いている。
チューブの途中からは枝分かれして、
一方にはピストルのような、物騒な形状の操作ハンドルが。なにこれえ・・・

 

・・・ほとんど小ぶりなガソリンスタンドぢゃん!!
 

本気!? こんなものが楽勝なわけないやん! 見てわかるよお! すぐわかるよおおお!

 
「こ、これを鼻の穴からつっこむんですか!?」
「そうですよ。大丈夫です、すぐに終わりますから」
 
真顔で黒いチューブに麻酔ゼリーをうねうねと塗りつける医師を見上げた。
どこかで見た誰かに似てる。ああ、小泉純一郎にそっくりだ! 髪型も。
ううっ、なにこの、まったく容赦しないって感じの、ドエスなイメージ・・・。
背後に立っていた看護師さんが、それとなく私の背中に手を沿える。
黒い、思ったよりずっと太い、長ーいチューブが私の顔の前に近づいてくる。
チューブのむこうに、ぜんぜん笑っていない細い目がある。
 
「はい、じゃあ、顎をあげて。抵抗すると苦しいですよ」
 
細い目をいっそう細くした小泉純一郎似の医師に顎をつかまれ!
鼻の穴をむぎーっと持ちあげられた!
そして、チューブが穴につっこまれはじめた!


ああ・・・あぎええええ!!
 
どえいゃいでぇああだずげーでえいえ!!


「抵抗しないでください! 鼻の穴を閉じないで!」

「力を入れると痛いから。顎を出して、抵抗しない! 鼻の穴閉じない!」

 

ぞんなごと言われまじでぼずどふぇっどっぼでえいえ!!


鼻の穴を通ってどんどこどんどこ体内にチューブが侵入してくる。
痛い。怖い。最低。最悪。凶悪。邪悪。史上最凶。
鼻の穴がめっちゃ痛い。キンキン通り越えてギンギンする。ツンツン通り越えてヅンヅンする!
どばっどばっ目から鼻からあふれ出す涙。

鼻腔を過ぎて食道に向けてグイッとカーブする部分が、粘膜をズイズイこすっていて痛すぎる。
しかも終わらない。入れても入れてもまだまだずいずい長ーいチューブが続いている。
チューブはのどの奥を通って、食道を降りてゆき、胃へと向かっていった。
体は硬直してまったく動かせない。

緊張もあるが、つばを飲み込もうとすると、体の内壁がチューブに当たってえずきそうになるのだ。
いま私は、鼻から胃までチューブを通された串焼き状態なのである。
チューブをにぎった小泉純一郎似の医師の手加減次第で、
タレにするか、塩にするか、運命を決められてしまうのだ!

ああ、せめてネギマにして・・・ワンクッションいれて・・・

とにかくひとつでも筋肉を動かしたら、えずくか鼻の激痛か・・・

ていうか、いま地震がおきたら、あたし、どうなるの?

先生、お願いだから横揺れも縦揺れも私とチューブと一体化して揺れてえええ・・・

 

「抵抗してるよ? もっと体の力を抜いて」
 
あ゛、あ゛い・・・。
 
看護師さんが私の肩に手をかけ、体をゆさゆさとゆすってくれた。
 
「リラックスしないと痛いですから」
 
あ゛、い・・・。
 
チューブから空気が送られて、胃がもこもこ膨らむ。
モニターが私の視界に入る位置にうつされた。
体はまったく動かせないので、視線だけを向ける。
ピンク色の、ぷりっぷりの胃壁がそこには映し出されていた。
医師が、モニターを見ながら言った。
 
「ああ、きれいな胃壁だねえ。問題なさそうですよ」
 
ぞうでずか・・・
うん、でも、そうだな……。
どばどばと鼻水と涙を垂れ流しながら、うっすらと、こう思った。

「これ、ミノかな、センマイかな・・・まだまだ新鮮そう・・・
輪切りにして、ごま油と刻みネギで和えて、かるく焼いたら、おいしそう・・・」
 
「もうちょっと奥、十二指腸もいってみましょうか」
 
えええっ!?
もうやめて、抜いて、抜いてえ、そんなに奥まで入れないでえええ!!
必死で目で訴えてみるも、細い目はモニターに釘付け、こちらの懇願など蚊帳の外。
ずいずいーっとチューブが挿し込まれて、カメラは十二指腸へ。
 
「ここもいいですね。実はもう、胃の痛みなんか収まってるんじゃない?
写真撮っておきましょう。あ、ここも撮ろう。ここもいいね」

 
いいからはやく抜いて、抜いて、お願い、もうだめ、やめて!
やめて、やめて、お願い、もう抜いてえええええええええ!!

 
***
結果、胃も十二指腸も食道も、取り立てて悪いところは見当たらなかった。
ぷりぷりのピンクの洞窟写真を何枚か渡され
手描きの胃のイラストとともに、どの部分の写真なのか、丁寧な説明も受けた。
ストレスで不調を起こしやすいが、神経からくるもののようで、
心配しすぎず、少量の胃薬で、もう少しリラックスできるような生活を考えればよいとのこと。
 
「大丈夫ですよ。病気ではありませんから。安心してください」
 
小泉純一郎似の医師が、目じりをさげてにっこり笑った。

「はい、この写真は、記念にどうぞ」

 
ほっとした。それまでキリキリしていた胃が、落ち着いた気がした。
鼻の穴はまだまだ余韻で痛かった。
その後、鼻胃カメラ体験談を語ってくれた友人が、異常がないなら、
食事制限なんかせずに、食べたい物を食べて楽しめと食事に誘ってくれた。
私は、たびたび右の鼻から垂れる鼻水をぬぐいつつ、晩酌しながら、
鼻胃カメラが全然楽勝じゃなかった件を切々と訴えた
。すると友人が言った。
 
「へえー。そうなんだ? それは大変だったね。やったことないから知らなかった」
「ええ!? 口から入れるより随分ラクになったって言ってたじゃん!」
「そうだよ? あれは『口からよりも、随分ラクになった』という、聞いた情報だよ?
そしたらアンタ、検査受ける気になっちゃったんだもん。
胃カメラなんか、鼻からも口からも、一度もやったことない!
よくやったよねえ、すごいよ、たいしたもんだ。おれは絶対やりたくない!」
 
・・・・・・これは、愛でしょうか。愛だよね!?
なんにしろ、自分の胃のなかを目で見て、はっきり「病気ではない」とわかって、
本当に安心できました。
実は、父親が30代のときにひどい胃潰瘍を患ったと聞いていて、心配でもあったのです。

慢性的な胃痛でも、いつものことと片づけてしまうよりは、一度診てもらって良かったと思う。
次に検査するのは何年後になるのかわかりませんが、その時はもっと医学と科学が進歩して、
胃カメラ、蜘蛛の糸のようにやせ細っていることを希望いたします。
うん。日本人ならできるよね!

ああ、右の鼻の穴、痛い・・・。
日誌 | comments(0) | -

鼻から胃カメラを飲んだ(前編)

今朝、はじめて、鼻から胃カメラを飲んだ。
胃袋も十二指腸も食道も、ぷりっぷりの健康なピンク色だった。
鼻と両目からどばどばと大量の涙を垂れ流しながら、
モニターに映し出された自分の内臓を眺めて、
おぼろげに、私は、こんなことを考えていた。
「これ、輪切りにして、ネギとごま油で和えたらおいしそう…」
 
***
 
ここしばらく、胃の痛みと張りが続いていた。
消化器科の医師から胃薬を処方されていたが、症状が変わらない。
時折、激痛が走ったり、消化不良で二度、三度、もどすこともおきた。
だんだん、「まずい病気なのでは?」という不安が募るようになり、
これでもってますます胃が痛みはじめた。
医師は「大丈夫だとは思うけど、心配ならば」と前置きをして、
胃カメラ検査をすすめた。
 
「鼻から入れるタイプですから、痛くないし、すぐに終わりますよ♪」
 
医師は、笑顔でこう言う。

「鼻から入れるタイプ」?
 
これは、「こ、これを鼻から入れるつもり!?」
と震えるような邪悪な機械にちがいない・・・。

 
「痛くない」??

聞いてもいないのに、わざわざ「痛くない」と言うなど
あまりにあやしすぎる。
相当に痛みをともなうのだろう・・・。


「すぐに終わりますよ♪」???
 
ほんとかよ!?

「とにかく早く終わらせてえええええ!」
と懇願するような目に遭わされるのにちがいない!
 
考えていたらますます胃が痛くなってきた。
鼻胃カメラ経験者だという友人に相談してみた。
すると、笑顔で医師と同じことをいう。
 
「昔の、口から飲むタイプのでかい胃カメラにくらべたら、
ずいぶんラクになったもんだよ。
口から入れるやつはオエエッってなって大変だったけど、
いまのは、ススーッと鼻から入れるだけ。
鼻に麻酔もするし、
楽勝、楽勝♪」
 
へえ、そうなんだ? 経験者のあなたがそう言うなら……。
それでも決心がつかないので、さらにネットで 「鼻 胃カメラ 痛さ」 と検索してみた。
ブログや質問サイトをのぞくと、体験談が続々と出てくる。


 
絵文字:虫眼鏡 楽勝! 鼻からの胃カメラより、バリウムの方が遥かにつらいです。
痛くもかゆくもないとは言いませんが、注射の方が痛いんじゃないかな。
 
絵文字:虫眼鏡 最近、鼻から入れる胃カメラの検査をしました。
もう、これは革命だと思いました。太さは、何ミリあるでしょうか、
ともかく鼻から楽に入れられる程度の細さです。柔軟です。
 
絵文字:虫眼鏡 確かに鼻に水が入ったような痛みがありますが、それ以降は
モニョモニョした感覚で痛みは全くありませんでした。
断然鼻から!!!


そっかー。鼻から胃カメラを大絶賛する経験者の書き込みがこんなに・・・。
悩んでてもしょうがないし、鼻からカメラっつっても、
どーせ、鼻からスイカどころでない、出産のあのド激痛よりは大したことないんだろ!?

そういうわけで、検診を予約、昨夜は絶食となった。
***
 
検査当日。
最初にラードを水で溶いたような、どろどろとした白い液体を、
おちょこ一杯飲まされる。これで唇のまわりがぬるぬるする。
喉のすべりが良くなったのだろうか。

まず医師が、私の鼻をむぎーっとブタっ鼻にしてのぞき、穴を物色。
それから、鼻の麻酔だ。
右の鼻の穴を思いっきり指で押し開かれて、
注射器で血管収縮剤と麻酔ゼリーをジュボボボと注入されるのだが、これが
 
痛いっつうの!!!!

プールのなかで鼻から水を飲んでしまったときの、
あのツーンとする痛み…の、10倍ぐらい強烈なのに襲われ、
とたんに目から涙があふれ出し、足の指がぱかーっと開く。
そのまま順番を待っていると、
カーテンで仕切られた奥の検査室から、
先に検査を受けはじめた
男性の声・・・

・・・にもならぬ、獣のような鳴き声が。

 
「ごおぇええぶぉおえ゛え゛え゛え゛え゛!」

「はいはい、ラクに。ラクにして」

 
「ごがぁごおぇええぶぉおえ゛え゛え゛え゛

がぶぇぼふぇごおぇえぶぉおえ゛え゛え゛え゛

ひいいいいいっ……。
ななななんなのよ、隣のおじさんめっちゃ苦しんでるやん!
どこが楽勝なん? なにが革命なんっ!? ぜんぜん柔軟ちゃうやん!!
「注射のほうが痛い」って、どこの世界に注射でこんなことになるおじさんが
いるっつうのさああああっ・・・
やっぱり痛いんじゃないのよおおおおおお!!
日誌 | comments(0) | -

フィルムで映画を観る

金曜の朝からぶんぶん車を運転して福島県だった。
今度、企画で参加することになっている映画祭の会場で
下見をしたり、実際に上映されている様子を見たり、
映写室に入れてもらったり。
この日、稼働していたのは、いまや絶滅危惧種とされる
イタリア製の超立派な35ミリフィルムの映写機で、
業界では「映写機のフェラーリ」と呼ばれているものらしい。
はじめて現物を見たけど、となりに置いてあった普通の映写機と
比べると迫力が段違い。
小結と横綱ぐらい違う。
ちょうど『蒲田行進曲』を上映しているところだったんだけど、
大きな2つの車輪でフィルムを巻きあげていく姿に圧倒された。

以前の映画祭では、上映中にフィルムが千切れてしまい、
場内真っ暗、あたふたする映写技師、ひゅるひゅる舞うフィルム、
館内マイクから「皆々様、お暗い中大変失礼いたします!」と、
おもしろトークだけで30分繋いだ支配人・・・なんていうハプニング
もあったそうだ。
そんなハプニング遭遇したい。

久しぶりに『蒲田行進曲』を見たけど、よくできてる映画だなあ。
松坂慶子って美人だよなあ。
日誌 | comments(0) | -

表情と語り口調

占いをあまり必要としない人間なので、
氾濫する星座占いの類は、右から左へ流れてゆくのですが、
人相占いの話になると、「それ、一理あるかも?」と、
目を留めてしまう私です。

たとえば、同じ目鼻口を使って作られた顔が複数あったとして、
でも、仕事や、趣味、生活や思考パターンがそれぞれ違えば、
おのおの違う筋肉を使って表情を作るパターンができて、
それが顔に刻まれて、特徴として出ることになる。
『似てるけど、違う人』『同じパーツの、違う顔』になる。
顔というより、表情か。

科学者は科学者らしい表情をそなえた顔をしているし、
読書好きは読書好きらしい顔をしているし、
ひたむきで純粋で、子供らしさも、良い生意気さもある高校球児、
厳しい訓練を乗り越えて使命感を帯びた顔の自衛隊員、
いつも子供たちを見守る優しさの溢れた顔の保育園の園長先生。
人前に出ている人は、不思議と見られる顔に変わっていくし、
悪事に手を染めた人は、表情も染まっていくように思うし、
性欲の解消ばかり考えてる人は、そういう顔に・・・。
総理大臣なんか、就任したときと、辞任するときでほぼ別人だし。



私には宇宙飛行士の油井さんに超絶そっくりの知人がいて、
テレビで油井さんの映像を見るたびに笑えてしまうほどなんだけど、
昨日、宇宙へ飛ぶ前のインタビュー映像を見ていたら、
やっぱり違う人だなあと思った。(そりゃそうなんだけど)

私の知人は、人を楽しませるために、相手の反応を気にしながら話す
タイプなので、声のトーンが高くなりがちで、抑揚や身振り手振りが
はげしく、黒目がいつもきょろきょろ動いている。
一方で、油井さんは、終始落ち着いたトーンで、声に抑揚はあっても、
その振れ幅が狭く、非常に冷静沈着で、精神的に非常に安定した人
なんだなと感じた。眉も黒目もあまりきょろきょろ動かない。

宇宙飛行士の選抜試験のなかには、密閉された狭いスペースに、
受験者10人程度を一定期間共同生活させて、日々の課題を与え、
24時間監視カメラで彼らの様子を観察するというものがあるらしい。
ストレスフルな環境のなかで、人とどのように接し、どんな反応を見せ、
問題が起きてもいかに冷静沈着でいられるか、打開する力があるのは、
協調性があるのは誰なのかを見極めるという。

なるほどなあ。
紙にぺろっと書かれた答案用紙や、身体検査の数字だけでは、
決して人間を判断することはできないのだ。
日誌 | comments(0) | -