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金子國義邸にて

午後から時間が空いたので、画家の金子國義邸へ遊びに行ってきた。
金子先生にお線香をさしあげて、貴重本の積み上がった書棚を見ていたら、養子の金子修くんがあれこれ出してくれて、珍しいフランスの画集や、翻訳本を見せてくれた。

 

 

修くんてのは、もともと大阪で土方をしていたんだけど、たまたま展覧会で大阪に来ていた金子先生とバーで知り合い、金子先生が一目惚れ。
その場でスケッチしたり写真を撮りまくったりして、そして、そのままモデル兼運転手となって縁もゆかりもない東京へやってきて、金子邸に住み込んで画家助手となり、古今東西の芸術を教え込まれて、金子作品のすべてを把握し、最終的に養子になり、そして喪主になったという奇妙な人生を送っている人だ。
切れ長の目で日焼けして引き締まった体は、そのまま金子作品に登場する「若い男性」として数多く描かれている。

 

 

金子邸で同居することになるや、髪を切られて、服装やズボンのすそ幅、スカーフまですべて先生指定のものを身に着けることが義務付けられたらしい。
話を聞いている分にはめちゃくちゃ面白いけど、本人は大変だったろうなあ。
でも美術や文学、映画、建築にいたるまであらゆる教養があって、いろんなことを教えてくれるので、私にとって貴重な知人だ。

 

アトリエのラジカセにカセットテープがセットされたままだったので、スイッチを入れてみると、山田五十鈴の声が聞こえてきた。
どうやら昔の映画の音声だけを録音したもののようだった。
全部は聞いてないけど、たぶん幸田文原作の『流れる』だった。

 

あとで修くんに聞くと、絵を描き始めるまでの空白の時間は、いつも映画を録音した音声を聞いて、空想していたのだそうだ。
そのほうが頭のなかの絵が空っぽになるらしい。
いざ決まって描き始めると、ソウルとかジャズとか楽しい音楽に切り替えていたようで、そういう音楽もたくさんあった。

 

なんとなく書棚から引っ張り出した藤田嗣治の画集のなかに、何枚か付箋がつけられていた。
猫を抱いた少女の絵や、猫単体の絵だった。
ああ〜、なるほど〜。そういえば金子作品に、猫を抱いた少年の版画があったよなあ。藤田からインスピレーションを得たと言われたら、まったく合点がいく作風なのだった。

 

藤田嗣治は、ジャン・コクトーが日本へ来た時に案内役をしたそうなんだけど、吉原遊郭へ行ってみたら、女郎が白塗りで格子窓の向こうから手招きする姿が「怖すぎる」とコクトーが言うのですぐ引き返すことになり、しかし、その後に鑑賞した歌舞伎では『連獅子』に感動して、着想を得て、『美女と野獣』を撮ることに繋がったんだって。
野獣のあのモサモサ感は、連獅子だったんだ。


ほかにもいろいろ面白い話を聞いて、収穫が多かった。

テーブルの上に、ケネス・クラークという美術史家の名著が置いてあったので、ガン見してたら、くれた。
本くれる人は、いい人だ。

 

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