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加戸前知事の「愛媛県は加計ありきでした」演説に同情してよいのかな?

今朝の産経新聞の社説「加計問題 不毛な論争にけりつけよ」。

 

不毛だ、印象論だとケチをつけているが、不毛に終わらせようとしているのは

官邸だろう。議論を拒絶し、官僚に、必要な情報を隠蔽させるからだ。

当事者に事情聴取すれば真実がわかるのに、その当事者に発言させないよう

隠すから、むしろ自分で悪印象を倍増させているんじゃないか。

 

閉会中審査では、参考人招致された加戸守行前愛媛県知事が、

慢性的な産業動物獣医と公務員獣医の不足でいかに困っているかを理由に、

 

「我慢させられてきた岩盤規制に、ドリルで穴を開けていただいた。

『ゆがめられた行政が正された』というのが正しい発言ではないか」

「東京の有力な私学に声をかけたが、けんもほろろだった。愛媛県に

とっては、12年間、加計ありきだった」

 

と、獣医学部の開設こそが愛媛県の長年の夢だったのだと語った。
 

<東京モンは冷たいが、やっぱり岡山の加計サンはわたしら田舎モンの

気持ちを理解してくれる、わたしらがこんなに必死でやってきたのに、

なぜ、安倍叩きの具にされなければならないんだ……>
 

そんな老いた前知事の訴えに、耳を傾けた人もたくさんいるだろう。
その思い入れ、気持ちはわかる。
地方愛で一生懸命考えてきたところもあっただろう。

 

いや、しかし、情に流される前にちょっと待て。

 

同じように畜産獣医がほしい、鳥インフルエンザに怯えているという

地方はたくさんある。
 

じゃあその地方にもどんどん獣医学部を開設すれば、獣医が増えて、

必ず万全の態勢になるのか?
それだけの教育の質、教員の確保ができるのか?

 

10代20代前半の若者で、高額の学費をかけて獣医になった人たちが、

その大学を出たからといって、そんなに都合よく、喜んでその地方に

定住して働いてくれるだろうか?

 

その獣医学部のために流し込まれている超巨額の土地費用、助成金、

運営のための補助金をペイして、地方を豊かにするほどの存在になる

という、公益にかなった話なのか?

 

一私学に流し込んだカネのほうがはるかに巨額になって、

財政破綻を招き、自治体が教育ビジネスの食い物にされるような結末

に至ることはないのか?

 

そこが知りたいところなのだ。
加計学園のために、京都産業大学はむしろ「規制強化」されて排除された
ことの説明にもならない。

いくら老いた前知事が、この夢をかなえてくれと訴えたところで、

その夢が、<公のための夢>なのかどうかは、別の冷静な判断基準を持た
ねばならない。


 

一番の問題は、獣医のなかでもペット診療のほうが人気で、

畜産や公衆衛生はやりたがらない人が多いという現実なのだ。

特に畜産の獣医は、地方のあちこちに呼ばれて飛びまわっている。

先日、女性の畜産獣医が話すのを聞いたが、
馬の肛門から腕をつっこんで検査したり、鳥インフルエンザが発生して
つらい気持ちを押し殺して農家に殺処分を命じなければならなかったり、
本当に過酷な仕事ぶりだった。

 

月の3分の1しか自宅にいられず、小さな娘から

「パパと、お馬さんと、どっちが大事なの?」

と聞かれてしまったという。
家族を犠牲にする人の存在によって、畜産の質は保たれている。

 

独身なら、ますます定住できない境遇になる人も多いだろう。

結婚して家族を持つことが難しく感じる人も多いと、やはり産業動物の
分野は避ける人が多いのではないか?

 

しかし、だからと言って、獣医の全体数を増やせば解決するという
単純な話にはならない。


これは、農林水産省がまとめた家畜の飼養頭数と戸数の推移。

戸数は、畜産の大規模化によって、豚、肉用牛、乳用牛ともに軒並み低下

している。



 

ちなみに犬猫の飼育頭数も減っている。


 

大幅な人口減少が予測されている時代に、これが大幅に伸びるだろうか?

 

やはり、獣医の全体数を増やすことよりも、畜産獣医、公務員獣医の待遇面を

改善・強化・後押しすることで、
ペット診療よりも、畜産や公衆衛生に従事してみようと意識を向けること
のほうがずっと重要なのではないか?


地方のあちこちに、巨額の税金をぶち込んで、私学経営者の私腹を肥やすなら、

畜産や公務員獣医師になってくれる若者を援助することに直接お金を使って
もらうほうがよい。

そのまま私たちの食生活や公衆衛生に直結すると感じるから、納得できる。

よって、「総理のご意向」が出るまで、12年間いくらがんばっても開設に
至らなかった過去の「規制」には意味があったと考える。
「官邸の最高レベル」がゴリ押しした様子に、公益に叶う判断が伴っている
とは思えない。改革するなら、そこじゃない。

 

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