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王様と査察と駐在大使。


48周年にもなるラテンバーで、大量のレコードやCDのなかで
ずーっとずーっと選曲し続けている71歳のDJ Kさん。
この頃、店内のスピーカーの調子がよろしくなく、いいところで
音質がストンと落ちたりする。
この際、思い切って天井裏開けて配線をやり直したほうがいいよと
話していて、Kさんを慕うラテンDJ達が、「喜んで手伝いますよ!」
と声をかけてくれるんだけど、Kさんは頑固一徹、受け付けなかった。

「配線で音質が変化するんだ! この店の音は俺にしかやれない!」

それは、本当にそう。
単純にまっさらにして、ゼロからクリーンな配線を構築してしまったら、
うちの店特有の、ずっと大音量で聞いていても疲れない、ラテンの
生音源に向いた絶妙なサウンドバランスは失われてしまうのです。

ところがKさんも、年齢的に体調次第で出勤できなかったり、
なにぶん古い店なので、やるには結構な覚悟が必要だったり、

作業すると言っても、スピーカー7台に、巨大ウーファー3台、
やはり男手が何人か必要だったりして、なかなか話が進展しない。
私が選曲してるときも、ぼちぼち音が落ちて、変な顔で見られたリする。

「もくれん、Kさんの弟子なんだから、上手に説得してよ」

常連さんたちは言うけれど、音はDJの財産…というか尊厳に触れて
しまうんですよ、71歳の大先輩に向かって、私ごときが進言できるわけ
ないでしょ!
ここは、DJじゃなくて、サウンドシステムの専門家をうまく紹介して、
仲良くなってもらって、作業に入っていくしかない。

というわけで、先日やっと、常連さんが、若いオーディオの専門家を
連れてきてくださって、まずは乾杯するところから始まったのだけど…。

とりあえずどんな機材がブースにあって、どのぐらいの配線が店内に
伸びているのか、実際に見てもらうところからはじまるのかと思ったら、
Kさん、「この若い専門家は、どれほど音がわかってる奴なのか?」
という心理に入ってしまって、なかなかブースのなかに入れようとしない。

店の配線図面を持ってきて、それを広げながら、音のポリシーを語る
ところからはじまったものの、ポリシーがありすぎて、30分経っても
ポリシーが終わらず、一向に進まない。
若い専門家は、人生の先輩の前で、礼儀正しく話を聞き続ける。
店のサウンドをよく知っている紹介者の常連さんは、横について、
Kさんの意向を尊重しながら、オーディオ専門家も立てつつ調整していく。

なんだか、アラブの王様と、査察に訪れた国連、調整役の駐在大使
みたいだった。また、Kさん、この日は中近東の曲かけてるし。
でも、仕方がないんだよね。自分の創り上げた音を、そう簡単に他人に
いじらせるようなDJが、何十年も、ひとつの店を支えることはできない
んだから。

店を仕切る私たち女性陣は、口を出して紛争が起きると良くないので、
少し離れたところから、駐在大使に向かって極秘LINEメッセージを送り、
率直な意向を伝える。

《とりあえずブースに入れて、見てもらって下さいよ!》

〈いや、Kさんが納得しないと〉

《なにを納得しなきゃならないの?》

〈彼が、この店の音を理解しているかどうか、ですね〉

《勢いで中に入れちゃえばなんとかなるのでは?》

〈それは最後です。段階を踏まないと二度と誰も入れなくなるから〉

うーむ。駐在大使、がんばって!


・・・・そして1時間後。

ようやく、駐在大使の見守るなか、Kさんと若い専門家が握手!
やったー!!
アラブの王様は、国連の査察を受け入れることになり、
さあ、じゃあ、さっそく中に入っていただきましょうよ、となったが、
ここで、駐在大使から極秘LINE通信が。

〈とりあえず、今日はお帰りいただいて、来月の金曜日に、
DJブースに入ってもらって、状況確認することになりました〉


来月うううう!? はあああ・・・道のり遠いなぁ・・・。


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